北海道教育委員会シンポジウム『子どもの食生活を考える研修会』のレジュメ
                      2003/12/11(一部改訂)
 
 私の診療は、アレルギーの原因を見つけて対策を立てることが中心ですが、これを
20年続けてきました。
そんな中で、「私達が、便利さ快適さを追求め、しかも、それを安さ上がりに済まそうと、
たくさんの化学物質、電磁波やハイテクのマイナス面を軽視した利用を進めてきたため、
私達は本来の生活リズムを崩し(免疫系、神経系、ホルモン系まで)、その弊害として
様々な病気が現れ、アレルギーはその警告を発しているのではないか?」と考えるように
なりました。
 食べ物アレルギーでは、根本的な原因が、『飽食・美食と、日本人本来の食性から
離れたこと、そして、化学物質の乱用』にあるのだろうと感じています。
そして、せめて孫の代くらいまでの健康は考えて生活全般を見直すべきだろうと
思うのですが、現代の日本では、そんな意識を持ちにくいかも知れません。
 
その理由をいくつか上げてみますと、
1.便利過ぎる
・準備せずに済む生活に慣れて、先を考えずに行動する習慣ができてきました。
 (例えば、食事を作り忘れても、24時間開店しているお店には調理済みの食品、
  家の冷蔵庫には冷凍食品等があり、電子レンジもあるので取りあえずは食卓を
  十分満たせますよね。)  
・便利なために、全部、自分でしたほうが楽だから、お手伝いに心から感謝できないし、
 人の情けも伝わりにくい。
・それに関連しますが、煙草や甘い物など嗜好性の強いものは依存症(中毒)になって
 止められなくなりやすいですね。
 
2.情報量が多すぎて処理しきれないこと
・一部分を深く見詰めることはできる(学者がその典型)のですが、全体像が見えない人が
 多いようです。
・膨大な情報の中で、何が重要かが見えないために、心地よい方に偏った判断をして、
 危機管理の感覚が麻痺しています。
・反面、プライバシーが大事にされすぎて、互いに理解し活かし合うという日本人本来の
 特性が失われつつあります
・日本人はプライバシーを上手に使えないようで、下手な秘密が嘘とだましの温床と
 なっているようです。
・隠し事のしにくい環境によって「人と人との関係性」や「人と自然との関係性」を
 大切にしてきた日本人の長所が崩壊し、疑心暗鬼に満ちた社会に移りつつあるのでは
 ないかと考えます。
 
◎私は、子育てをするにあたって、目標を2つ持ったほうがよいと思っています。
・1つは、今の日本では子ども達に残す財産として、物質的なものはもう十分過ぎる
 くらいあるので、まず、健全な心と身体を育てる、害さない、または、取り戻すことに
 重点を置くことです。
・もう1つは、小さな世界で、かつ大雑把でも良いから、全体像を広い視野で見られる
 ように子育てを始めて、徐々にその範囲を広めて行くようにしていくことです。
 
◎そんな考えから「子ども達の食生活について」いくつか提案してみます。
・まず、嗜好品は、嗜好品中毒(依存症)予防のため日常的に家の中に置かないこと、
 持ち込まないことです。
・接待のように、お友達の親や祖父母が与えるお八つは、多すぎて夕飯をまともに
 食べられなくなる程です。
・こんな習慣が子ども達の健康を蝕む最大の元凶になっているように思います。
 早く止めましょう。
・次に、最も身近な人(お母さん、お父さん、お婆ちゃん、お爺ちゃんなど)が、
 真心込めて手料理を作り、その作る姿を見せるとともに味わってもらう。
・料理の味の半分は心で感じるもので、自分のために作られた料理は格別に美味しい
 ものです。
・お手伝いで、子どもには料理作りにどんどん参加させましょう!!
 みんなで楽しく手作りを!
・初めは、非日常的な料理で技術を養い、次いで、日常のお手伝いをさせて、
 ひたすら褒める感謝するように計画しては如何がでしょうか?
・(食習慣に関しては)食べるのはお腹が空いてから、ゆっくり良く噛んで食べることを
 第一に考える。
・まず、その起点は体を動かすことです、そこから体調や生活リズムを整えるように
 計画したいものです。
・(食材では)食卓には、化学物質を減らして食性に合う伝統食を!
 近くで獲れた季節の(旬の)食べ物が一番です!
・遠くから運べば、排気ガスなど環境への負担が増え、栄養価は落ちるし感染の危険性
 まで高くなります。
・(心の持ち方では)情報を公開し合って、互いに良い所と弱い所を知り欠点を補い合う
 意識を育てることです。
・(ストレスを減らすには)ほどほどで満足することが大切です。
 もう少しもうちょっとと欲張って、大切なものを失くしていませんか? 
・期待や要求のハードルを下げて、褒(ほ)めたり感謝する範囲を広げましょう。
 (子ども達に対しても自分自身にも)
・感謝の念は、まず直接見える台所の貴方に向き、食材を育てる農漁業へ、そして、
 いただく食材の命にまで広がるように進めのが良いと思います。