石狩地区教育研究会(理論部会)講演レジュメ (一部追加・削除/みどりやま)  
 
「アレルギー、化学物質過敏症および電磁波過敏症に思うこと:シックスクールを中心に」
                                 2003/10/17
 
私の考え方;
・アレルギーは 40〜50年前から増え始めた。
・その主因は、飽食 美食と利便性や外見を良くするための方法、特に、化学物質や
 電磁波の乱用である。
・これらにストレスや生活リズムの乱れなど多くの要因が積み重なり、対処能力を
 超えた所に癌や成人病などの慢性疾患が起こり、アレルギーと過敏症はその警鐘で
 あると考える。
・また、シックスクールの被害者は、その病態から2つに分かれる。
・1つは、化学物質を大量に吸い込んで起こる急性中毒。
・もう1つは、既に化学物質過敏症になり微量にも反応してしまう児童への危害である。
・しかし、化学物質過敏症が、軽い急性中毒を繰り返すうちに発症する例が多いことから、
 前者の蓄積が後者の引き金になるため、対応は異なるものの関連するものとして
 扱ったほうが良いと考える。
 
アレルギーから化学物質および電磁波過敏症への広がり;
1.アレルゲン(アレルギーの原因物質)は、主に食物→ダニやカビへと波及し広がって
  行く。
2.原因となる化学物質も、食品中・空気中の物質へと広がる。
3.アレルギーと過敏症は、互いに影響し合う。
  (主にアレルギー・化学物質過敏症・電磁波過敏症へと進む)
4.化学物質のアレルギーへの関わり
  ・アレルゲン自体として;アレルギーそのものを起こす
  ・アジュバントとして;アレルギー反応を助長する触媒の働きで発症しやすくする
             (電磁波も同様の作用がある)
  ・刺激物質として;皮膚や粘膜を刺激し直接的に症状を悪化させる
 
アレルギーと化学物質および電磁波過敏症とに共通する特徴
 
1.個人差が大きい
  (アレルゲンや過敏化学物質の種類、電磁波の周波数、反応の出る量や症状の出方)
2.種々な原因・誘因が積み重なることで症状が出始め、そのままに放置することにより
  益々こじれて行く
3.最も効果的な治療法は、予防と原因物質の回避(発生源対策など):発症と進展の
  両面に配慮が必要
 
◎化学物質過敏症とは? (北里大学 眼科の石川らの説を中心に)
・身体が弱っている時に多量の化学物質に曝されれば、多くの人が発症する。
 (遺伝的には10〜20%との報告がある)
 
・ 総身体負荷量>解毒能力や適応能力  で発症
  ・総身体負荷量 (total body load): 化学物質 + 心身の様々な要因(ストレスと
                  食事や生活リズムの乱れ等)の積重ね
  ・解毒能力や適応能力を左右する条件(化学物質過敏症になりやすい生体側の要因)
    (1)遺伝、年齢 (2)生活スタイル (3)発汗や運動量 (4)食生活
・一旦 この適応限度量を越えると、極めて微量にも反応し始める。
・更なる被爆の持続で、多種類化学物質過敏症(多くの化学物質へと反応が広がる)に
 進み、より低濃度でも反応するようになる。
 
・化学物質側の条件 (ランドルフの説より)
 (1)頻回、大量の曝露;新築時の家では大量長時間暴露の可能性
 (2)吸収が速いこと;脂溶性で揮発性なら肺胞から急速に吸収されやすい
 (3)天然の物では化学物質を含むか体の組織と結合するもの
・第一の治療は、できるだけ早い段階で原因を避けること
 
◎特徴的な症例からシックスクールを考える(年齢は初診時または発症時)
○Aさん(16歳);新築校舎・高校
 ・過眠症で朝起きられず高校を休学。
 ・食物中の甘いもの・豚肉・化学物質(農薬 食品添加物)が原因と判り復学。
 ・新築校舎に移ってから全身倦怠・嘔気・頭痛がひどく就学困難になるも、学校の
  配慮で主に自宅学習となり何とか卒業。
 ・大学に進学後、級友の香水で1日中続く咳発作や喘息発作が出現し就学が制約。
 ・この他、畳・合成洗剤・除草剤の散布時やパソコン(電磁波?)で、鼻炎、喘息や
  多様な神経精神症状が出現。
 ・隣室の携帯電話の発信と着信時、激しい頭痛が出現。
○Bさん(13歳);新築校舎・私立中学
 ・開校以来、給気を呼び込む換気扇がスイッチOFFのままであった中学校に進学。
 ・中1の秋に肺炎で入院後から、学校に行くと頭痛、顔の火照り、全身倦怠感、
  微熱が出現。(冬休みと夏期は症状なし)
 ・中2の秋、校舎の窓を閉め暖房が入ってから症状が再燃し就学困難となり、
  自宅学習に切り換えても軽度の頭痛が残る。
 ・この時点では、道立衛生研究所の調査で校舎内の異常高値のVOCはなかった。
 ・特に症状が強かったのは、体育館、講堂、コンピュータールーム、メディアルーム。
 ・中3の始業式後、顔面の発赤、頭痛と倦怠感が出現し、時間が経つと眼痛が加わった。
 ・両親が一般の床ワックスを使わないよう要請していたが、これを無視して春休み中に
  塗っていたことが判明。
 ・学校側は、ワックスがけは床の養生に不可欠であり、頻繁に塗る必要がある
  自然系ワックスでは多額の人件費がかかるため、変更も困難と説明。
○Cさん(17歳);校舎の改修工事・高校(生徒がいる中で1年以上に亘り続行)
 ・カップ麺、市販のお萩や餅で湿疹と胸焼け。(手作りお萩や自宅で作る餅で症状無し)
 ・発症はリフォームした自宅に入居してから。
 ・断続的な改修工事が始まって、湿疹、倦怠感、嘔気が出現し徐々に増悪。
 ・特に、学校の床ワックスに激しく反応して症状が出るようになった。
 ・修学旅行中、冬休み中は改善したが、通学再開後、週後半1〜2日は登校困難となる。
 ・教室天井の張替え後、胸焼け、胃もたれが加わり通学が全く困難になり、自宅学習に
  切り換えて症状が改善。
 ・パラジクロロベンゼン入りのプラスティクケースに入った上着を着て、1〜2分後に
  接触部分の湿疹が増悪。
 ・その後、道路工事や自動車の排ガス、芳香剤、化粧品、香水、消臭剤でも、湿疹の
  増悪、嘔気、頭痛が出現。
 ・電磁調理器に近付くと頭痛がするようになった。
○Dさん(10歳);床ワックス(メンテナンス)
 ・乳児期よりダニと食物にアレルギーで、皮膚炎、鼻炎、喘息発作が出現。
 ・小2のとき、ウレタン系樹脂の床ワックスをかけた翌朝から喘息発作を起こし、
  治まるまで1週間かった。
 ・以後、ホームセンターやスポーツ店に入店すると5分後には咳き込みと鼻炎症状が
  出現し、店を出ると治まる。
○Eさん(17歳);シンナー、農薬(ビル管理法)
 ・小学校まで、食物と花粉アレルギーで、湿疹、喘息、アナフィラキシーショック等の
  症状を経験。
 ・中2のとき、教師が落書き落としに使ったシンナーで意識消失と10日間の
  体温調節異常(39℃台・35℃台)
 ・高1のとき、ビル管理法(薬剤散布しなければならない法律ではない)の誤解釈から、
  学校に農薬(フェニトロチオン5%(残効性)、ジクロルボス2%(速効性))が
  散布され、ひどい眠気、視力低下、全身倦怠感、鼻炎症状が出現。
○Fさん(5歳);版木(教材)、床ワックス(メンテナンス)
 ・多種のアレルギー(食物(食品添加物 農薬を含む)、金属、ダニなど)を伴う。
 ・市販のメロン摂取後、不機嫌→眼球上転とリズミカルな奇声(意識あり)、
  市販の菓子やスーパーの魚で同様の症状。
 ・小学校で床ワックスがけの翌日や、吹き抜け共有の他教室でスライムを作った時、
  授業での版画用版木(Fc2規格)でも、複視、不随意運動などの神経症状が出現。
  (前者では、学校を休んでも症状消失まで約3週間)
 ・ファミコン中、眼球の不随意運動が多発
○Gさん(15歳);香水、煙草の臭い(生徒、先生)
 ・乳児期より食物や食品添加物(黄色4号など)薬品に反応して、喘息発作や
  アナフィラキシーショックがあった。
 ・中学の改築工事で喘息発作をおこした。
 ・クラスの男子が付けてきた香水に反応して喘息発作を繰り返した。
 ・教師や生徒の呼気や衣服に染み付いた煙草の臭いにも敏感に反応するようになった。
○Hさん(34歳);中学教師(学校で苦しくなるのは生徒だけではない!)
 ・娘が食品の農薬や添加物で湿疹が出ることを知り、自分も同じ原因で多彩な症状が
  起きることに気付いた。
 ・例えば、乳化剤を使った食品やコンビニのおにぎりを食べた後は、肩から上腕に
  かけて脱力してしまう。
 ・育児休暇が終わり、給食を食べるようになって症状が悪化したため、弁当持参に
  切り換えて改善していた。
 ・父の看病疲れ、食事の乱れ、精神的ストレスが重なり、葬儀の後化学物質過敏症が
  発症。
  (上記のほかに、線香・パソコン・新車が加わったことが原因と本人は考えている。)
 ・その他に反応するのは、コロン、香水、整髪料、たばこ、パーマ液、新聞、JR車両、
  田畑の農薬、除草剤など
 ・症状は、鼻炎、咽頭痛、咳、胸苦、胸痛、肩凝り、頭痛、微熱、目眩、関節痛、
  歩行困難(左大腿挙上困難)、脱力感、知覚異常(下肢の脱力感と触れたときの
  ピリピリ感)、手足の冷え、異常発汗、苛々、うつ状態、躁状態。
 ・パソコン授業では、手足、特に指先の冷えが強くなり最低限の使用にしている。
 ・農薬(カメ虫殺虫剤)の撒布時期には、咽頭痛、咳、胸苦、胸痛が現れて辛くなった。
○Iさん(36歳)主婦
 ・新築家屋での生活が断続的に繰り返され、臭気に敏感で、特に空気中の化学物質に
  対し徐々に過敏性が増加。
 ・行動的、熱血的な性格で、煙草やコーヒーへの依存傾向にあった。
 ・煙突の結露によるストーブの不完全燃焼が発端で化学物質過敏症が発症。
 ・息子2人も、化学物質過敏症と電磁波過敏症が発症。
 ・反応する多くの物質中、今の家で特に強いのは、ボイラー運転中の灯油臭と
  冬場のトイレの凍結防止電熱器が作動時。
 ・その他、塩素臭、香水・芳香剤、ペンキ、シンナー、ヘアスプレー、新しい家具や
  調度品、化学調味料入りの味噌汁、電気製品(パソコン、トイレ便座)、
  送電線の近く、電磁調理器(IHヒーター)
 ・症状は、頭痛、眩暈、手足の痺れと冷え、生理痛、月経前症候群、腹痛、嘔気、
  全身の凝り、臭いによる過呼吸症候群、思考力低下、気分の落ち込み、
  全身倦怠感(動けなくなる)。
○Jさん(1歳);農薬;(これからは化学物質過敏症になった子ども達が入学してくる)
 ・隣家の新築工事で防蟻剤が噴霧され(空き地での噴霧から外壁完成までの期間)、
  鼻水や咳とゼーゼー。(母が下痢・嘔気・頭痛・眩暈と全身倦怠、姉は咳と咽頭痛、
  父だけ昼間不在で症状なし)
 ・業者に外壁工事を急ぐよう交渉し、完了直後から症状が軽減。
 ・この間1ヶ月程度を要したが、母の実家に避難した5日間は症状が消失。
 ・この時点で喘息が発症し、その後も時々喘息発作に苦しんでいる。
 
◎なぜ学校に有害な化学物質が溢れるのか?
・・・おおもとは、有害性のある化学物質に依存し使い過ぎる工法と生活方法・・・
 
 (1)外見を良くし手軽に維持管理ができて、安く早く仕上げることを要求した結果、
  →狂わず剥がれず工作しやすい建材の採用で、強力接着剤やプラスチック製品の多用
   (ホルムアルデヒド、揮発性有機化合物 (キシレン トルエン)、可塑剤等の発生)
  →虫に弱く湿度調節できない建材や工法の採用で、防蟻・防カビ・防ダニ剤の多用
   (農薬、 ホルムアルデヒドの発生)
 (2)根拠に乏しい常識や誤解釈に基づくメンテナンス
  (農薬、ワックス(スチレン、合成界面活性剤、有機リン))
 (3)持ち込む教材や生活用品にも化学物質
  (新しい合板家具、クレヨン、絵の具、マジック、タバコ、香水など)
 (4)高気密化(省エネ手段)の割に不十分な換気により、こもった化学物質が抜けない
 
◎ホルムアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC)、農薬、燃焼ガスの発生源
 ・建材(壁 床など)、接着剤、塗料、ワックス、備品(ロッカー、パソコン)、
  暖房(ボイラーの排気)、消毒薬、教材(シンナー、絵の具、墨汁)、
  生活用品 (合成洗剤、防虫殺虫剤、トイレボールのパラジクロルベンゼンなど)
◎換気:データは常に自然換気が優っている
 ・夏は自然換気;空気の流れを直線にする。
   (風向や温度差を考えて開ける窓を + 室内の流れは引戸で誘導)
 ・冬は機械換気;省エネと換気のせめぎ合いとなるが、短時間でも全ての窓を
  開放する方が、換気としては有効。
◎建築物を建てるとき考えて欲しいこと
 ・健康な住まいの対策レベルの考え方
  ・レベル1:現在の病気を改善させる(重症化するほど厳密な対策が必要になる)
  ・レベル2:将来の病気を予防する
  ・レベル3:近隣や子孫に被害を及ぼさない
 ・ 化学物質過敏症から見た基本的な建築条件とは何か?‥‥
  ・建材;製造、施工、居住、廃棄の各段階で、健康を害さず最終的に土に戻るもの。
      再生建材に近くでとれる材料を加えて学校ができないか。
  ・換気;大前提は外の(流入)空気の清明さであり、結局は地球環境を守ることが大切。
      気候風土や廻りの環境に応じた、適切な換気計画と簡便なチェックを実施。
 ・生活の仕方も大切(適切な維持管理が苦にならない学校生活づくりが前提だが‥‥)
  ・化学物質を出さず持ち込まず、換気を心掛け、外気を汚さず、暖め過ぎず。
◎化学物質過敏症対策の提案(私が思いついたこと)
 ・現在の住環境における被害実態の把握を
  (学校の増改築、ワックスがけ、内外装材料、教材などによる被害状況の適切な調査)
 ・患者への理解と配慮から予防手段へ
  ・過敏症をハンディの1つとして理解し、共生社会へ向けた配慮を (特に公共施設)
  ・自分が加害者になっていないかのチェックも(特に揮発物や煙、香水、タバコなど)
  ・これらは、健康と思っている人にとっても、そのまま日常生活での予防手段となる
   (患者からの警鐘であるという理解)
  ・有効な換気の大前提になる、環境(外気)を汚染しないという配慮は重要
 ・建材について求めたいこと(新たに建設するとき、原因を調べるとき)
  ・含まれる物質の表示を徹底し、正確な情報を必要に応じて入手できる体制づくりを
   (原因を絞り込む時間や手間が減り、患者の病悩期間を短縮できる)   
 ・被害や相談に対応する体制を(工事終了まで我慢すると誰かに後遺症が出る可能性)
  ・学校や隣家の工事、対策が制限される借家での健康被害に、敏速に対応する体制を
  ・新たな被害を防ぐため、悪質な建材を作らせない、使われないようにする監視も
 ・価値観の変革が必要では?
  (「あれば便利でも無くて済むものは、一旦止めてみる」と、考えてみませんか?)
 ・家は永続的な財産という発想を取り戻し、愛着を持ち自ら維持管理できるよう
  早期(小学校)からの教育を
 ・化学物質に頼りすぎる生活全般を見直し、真に必要な物は何か健康面からの再評価を
 ・競争と収奪の夢見社会から、信頼し合い足元と未来をしっかり見据えた持続性のある
  共生社会にしましょうよ
 
◎患者会からの提案(子どもの健康と環境を守る会、黒嶋代表の文章から一部抜粋し改変)
○現在の学校建築の際の問題点
 ・学校建築の際に、安全な建材を相談できる体制にない。
 ・材料の吟味が不十分
 ・十分に換気しないまま使用開始。
 ・冬の施工が多い(十分に塗料等の成分が揮発されないうちに供用開始となる)
 ・教育委員会と文科省、建築行政と国交省等の連絡や情報交換が不十分。
 ・窓を開けても有効な換気ができない構造だったり、開けられない時(雨の日や冬)の
  給排換気設備がない所が多い。
 ・強制換気システムがあっても、スイッチが切られていた学校があった。
 ・最新鋭の空調設備では、クーラーを入れると窓を開けられず有効な換気ができない。
 ・健康調査もせず、換気一辺倒の対応策で原因究明がない(活かすべき教訓にできず)。
 ・VOCは空気よりも重いが、子ども達の体温による上昇気流により階段を煙突の
  役目にして上へ上へと押し上げられ、上階ほど空気質が悪化。
 ・ワックスは不要
  ・学校が求めるピカピカの成分は、ワックス中の有害化学物質であるスチレン
   モノマー(未反応)が残っているため。
  ・床材が木なら水分から木を守る必要があるが、塩ビシート(Pタイルやクッション
   フロアー)は、「水にも汚れにも強い」のが特長である。
  ・塩ビシートは、ワックスには関係なく可塑剤が年月とともに抜けて劣化する。
  ・硬い塗料の皮膜があるフローリングの上に柔らかいワックスを塗っても、傷はつく。
  ・塩ビシート(これ自体使って欲しくない)は、せっけんによる念入りな清掃で十分。
 
○シックスクール予防対策
 ・国レベルで、文科・厚労・国交の3省が共同研究し、シックスクールが起こらない
  安全対策を確立し指導する。
 ・各自治体や学校関係者は、学校工事の予定が決まり次第、市民・保護者に広報する
  体制をつくる。
 ・市民・保護者と自治体(教育行政・建築行政)や学校は早期に話し合いの場を持つ。
 ・建築材料の選定には、予算決定前に十分な安全配慮を盛り込むこと。
 ・メーカーの製品も日々改良され、安全性の高い対応製品が開発されている。
 ・建築材料の使用可能な時期・温度、使用方法をメーカーの開発研究室に問い合わせる。
 ・工期後の養生期間を十分に取り、子ども達に使わせるまでの期間を長めにとること。
 ・工事終了後には、文科省の4物質だけでなく、使用した有害化学物質に見合う物質の
  測定をすること。
 ・測定は予想される最も悪い条件で行うべき。(例えばコンピュータ室なら長時間、
  全PCを運転後)
 ・測定条件(部屋の温度や湿度、換気の状況など)正確に記載する必要がある。
 ・事実確認のため、指針値を超えた教室・学校、超えていない教室・学校、同時に
  一斉の健康調査をすべき。
 ・備品搬入の前と後で測定することが望ましい。
 ・使用建築材料を何処の何に使用したかを調べ、使用化学物質を中心に可能な限り
  測定し、原因究明して欲しい。
 ・情報公開は正確にする。(建築材料・測定結果など)
 ・問題が起きた時の原因究明をしっかりすべき。
  (揮発している物質の種類と量で、その後の対処法が違ってくる。
   揮発を止める施工か、全てを取り払うかは、物質の種類とその揮発量で決まる)
 ・原因物質や反応の程度には個人差があることを踏まえ、対策については、個々人の
  状態を最重視しよく観察しながら進めるべき。
 ・先生・学校は、購入する教材・備品・日用品の十分な安全確認を保護者と共にして
  欲しい。
 ・悪意の事実隠しは無論のこと責任者の事実誤認にもしく臨む。
  (それらが対応を遅らせ、子ども達の健康被害を拡大し重症化させてしまうため)
 ・指針値は目安であって、子ども達にとって安全を約束する濃度ではないことを
  共通認識とすること。
 
★おわりに★
 電磁波が子ども達の白血病や脳腫瘍を増やしていることが文部科学省の研究で明らかに
なりました。
さらに、動物実験であり日常より高いレベルの電磁波ですが、化学物質と複合することで、
本来は脳に到達しない有害物質が簡単に通過する恐れがあることも報告されています。
 現代社会は、私達が子どもの頃には想像できないほど魅力的な生活を実現しました。
しかし、当然のこととして負の側面があり、アレルギーや過敏症もその一部だと考え
られます。
 これらの疾患は個人差が大きく、個々の対応が必要です。しかし、昨今の急増と
重症化は、個別的な対応では間に合わず、対策の中心を(発症と進展の)予防に移すべき
ことを物語っています。また、この対策の有効性は社会全体で取り組むか否かで大きく
変わります。つまり、今求められているのは、私達の価値観や発想の転換であり、
程々の幸せで満足して互いに信頼し協力し合える社会基盤だと思います。
 シックスクール問題は、学校とは何をする所かという基本的な問題を投げかけています。
高い知識水準の代償に健康を奪って、それで健全な教育と言えるでしょうか?
昨年起きた調布の小学校の事例では、約2割の子ども達が影響を受けたと言います。
その多くは急性中毒です。その後回復したり今回は影響無し判定された子が、化学物質
過敏症の1ステップになっていない保証はありません。どうぞ、他人事とせず、明日は
我が子か我が教え子と考えて下さい。
 医者は悪化例ばかりを見ていますので、これは度の過ぎた提案かも知れません。
冷静に判断するには、全体像に迫る実態把握が必要です。そこで、私からのお願いですが、
児童達がどの様な物にどのくらい被害にあっているか、大まかにでも調査して頂きたい
のです。昭和60年に養護教諭の皆さんがまとめられた児童生徒の健康調査は、私達の
様な医者にとって貴重な判断材料になりました。シックスクールに関しても、何校かでも
試行して教えて下されば、本日ここで話した意義はたいへん大きいものになります。
どうぞ宜しくお願いします。
 また、これらの問題をこじらせる日本独特の原因に、物事を狭い人間関係の中で決め、
それに伴う嘘やだましを放置している体制があります。しかし、これは行政だけの問題
ではありません。私達一人ひとりがその加担者であり加害者であるという自覚をもたな
ければ解決しない問題に思います。
 日本人は、縄文の昔から自然や人との関係性を重んじ、個性を活かすのが得意だった
そうです。時間的にも空間的にも狭い範囲に限定せず、この日本人の特性を広い視野で
発揮できれば、健全な社会を実現する世界のリード役にもなれます。そのためには、
「個性(個人差)を理解する素地を甦らせて、相互に協力できる社会性を養うこと」が
必要です。専門化が進んだ現代では、複雑系的な発想で話し合い、将来の目標となる
イメージをしっかり打ち出すことです。
 まず、身近な自然や一般庶民の歴史、そして現在起こっている事実から学ぶこと。
そして、子ども達と共に勉強し直す所から教育を再スタートして頂きたいと願っています。
(参考資料)『複雑系思考でよみがえる日本文明』石川光男著、法蔵館