「子ども達とともに食と農をわくわく学び隊(略称:食農わくわく学び隊)」
  これまでの経緯と今後の方針
                     長谷川クリニック 長谷川 浩
 
1、これまでの経緯
 
○私は、食物アレルギーの診療を通じて、現在の食生活と社会感覚では病気が増える一方であり、早期に大胆な是正が必要と感じておりました。
 
食は、栄養を満たす手段ですが、食に関する病気の成り立ちを考えると、精神面や社会的なつながりまで複合的に理解する必要があります。
特に予防には、この観点が重要と思われます。
 
○本会(以下、学び隊)の設立に当たり、「米アレルギー研究会(以下、「米研」)」と「食農わくわくねっとわーく北海道(以下、「わくわく」)」が基礎となりました。
これらふたつの会について簡単にご紹介します。
 
・「米研(後木建一会長)」は、日本人の食を『米』で象徴し、『アレルギー』を現代病の入り口と捉えて発展させ、食と農と健康をテーマに異業種間の交流を通じたシンクタンクを目指しています。
(http://www.yukihikari.ne.jp/)
つまり、「米研」では、アレルギーを成人病や癌などの警鐘と位置づけているのですが、これら現代病を予防する手段として食農教育をテーマに加えました。
 
・「わくわく(長尾道子事務局長)」は、北海道で食や農を通じて健康、環境、教育、福祉、エネルギーの問題に興味のある人達が情報を交換し、企画を考え実践するゆるやかなネットワークです。
(http://www.at.wakwak.com/~wakuwaku/)
様々な分野で活躍中の個人やグループが参加しており、賛同しやすいテーマがあれば、大きな事業を展開できます。
 
○本会を立ち上げた直接の動機は、農業試験場の「稲作の小学生向け学習プログラム」を作成する動きでした。
これを推進したいと考え、まず、学校現場にニーズがあるのか確かめることにしました。
 
○山際氏、田中氏、狩野氏にお願いし、食農教育に興味がある教育関係者に声をかけて頂きました。
上記ふたつの会の有志とともに、「食農教育を推進するには自分達に何ができるのか?」という問いも加えて、集まった教育関係者や行政機関の方から現状やご意見を伺いました。
意見交換会を2002年12月に続いて、2003年1月に行いましたが、この時に参加者の賛同を得て「学び隊」が発足しました。
しかし、事務局の担い手がなく、その業務を「わくわく」へ依頼することになりました。
 
○「わくわく」の役員会では、昨年の初冬に食農教育の推進を決めていましたので、2003年3月に本会の事務局について要請しました。
本会が「わくわく」内で活動するのならという条件付きで了承され、隊員の大多数がこの条件に賛成しましたので合流することになりました。
また、「わくわく」の総会では、本会活動の予算案が承認され、予算が生まれました。
このため、「わくわく」内で活動することになりますから、隊員が「わくわく」に参加して頂くことが望まれます。
しかし、「わくわく」の役員会では、本会が自前で活動できれば独立することを認めていますので、「わくわく」に参加されない方でも隊員として活動できるようにしておきたいと考えています。
 
○この他にも、食と農に関連する機関や個人と積極的に意見交換し支援を求めています。
 
○平成15年4月12日に「米研」の総会があり、「米研」に対し「学び隊」の相談団体(シンクタンク)としての支援を要請し了承されました。
 
2、「学び隊」の目標
・最終目標は、物事の全体像を把握し、それぞれ自分の生き方に確信がもてる生活をすること。
・自然と社会をフィールドに、誰もが親しめる食とそれに関連する農を主要テーマに置く。
・「未来」と「結ぶ」をキーワードに、大まかでも全体像をつかむよう学びを展開する。
・各地域を点として「温故知新」を進め、それらの点を線や面に結び、相互の理解と尊重を計る。
・「学び隊」は、以上の方針に合致する地域活動について、その萌芽を促し円滑に進むよう応援する。
 
3、活動指針
・まず、多くの人が受け入れられる方法で。
・身近な所から始める。
・非日常から日常に向けて作業計画を考える。(楽しみながら土台づくりをする)
・地域の人達が自発的に進める活動を促し、楽しく長続きするように応援する。
・子育てや仕事の延長上にボランティアがあって、参加者各自に役立つよう計画する。
・何でもつなげてみよう。
・相互理解と相互尊重ができるように、共感しやすい話題提供と自己紹介を促す。
・(過去の知恵)地域の歴史を知る;講師は近所のお婆ちゃんとお爺ちゃんから始める。
・(現在の知恵)子ども達と一緒に専門家の話を聴く;講師は近所の小父さんと小母さんから。
・(未来に向けた知恵)分らないことは、もっと詳しい専門家につなげ学びの場を広げる。
・できれば、支援する活動が、地域の人々の良好な関係をつくり好ましい産業の活性化につなげたい。
・自然の流れやリズムを生かし自然に生かされる生き方を。
・一番自然に近い子ども達の感性から学ぶ。
・「何にでも良い所と拙(まず)い所が共存している」と考え、多くの側面から学ぶ習慣をつける。
 
4、2003年度計画
(方針)
手始めに、最も身近な地域で住民が積極的に参加する活動を応援するとともに、食の理解に向けて基本的な技術を身に付けるきっかけを提供する。
 
◎田植えから米料理まで;食と農から町内を活性化するプロジェクト(農教育班)
 
○稲作の食農プログラムは、北海道農業試験場の渡辺氏が、三年間の地元小学生の実習受け入れ経験から作成している。
基本的には、このプログラムに則り地域の事情に合わせて対応する。
 
○地域の町内会と学校が協力して、子ども達の作物づくりから収穫物の料理まで体験するプロジェクトを応援します。
一連の活動の中で、お年寄り(過去の担い手)から子ども達(未来の担い手)が学ぶなど学校を軸とした町内全体の交流を深めながら、各人が地域を知り魅力的な町づくりに向けて何ができるのか考えてもらいます。
まず、PTA、学校、町内会の協力が期待でき、学習できる圃場の提供があれば、私達の活動対象になります。
次は、具体的な計画ですが、町内の住民が積極的に参加して継続の意欲が湧くキャンペーンが必要です。
「学び隊」の農教育班の目的は、住民が主体的に活動し、それが円滑に進むよう助言やお手伝いをすることです。
経済的な支えや参加しやすい環境整備も必要ですから、住民一人ひとりが仕事の延長上にボランティア活動ができるようアイディアの提供もしたいと考えています。そして、できるだけ全体像に迫る学習ができて、住民同士の心をつなぎ望ましい将来像に進むには各自に何ができるか考えてもらうことを望んでいます。
 
○今年度は、当初、八軒西小を中心としたフィールドを考えました。
しかし、想定していた町内会と校区の関係や畑の確保など調整すべき点があり、広域化した形で計画を練る必要があるとわかりました。
今年は事を急がず、じっくり地域の人達の意向を確かめて立案したほうが良いようです。狩野氏と金森氏を中心に、引き続き検討して行きたいと思います。
 
第2候補であった茨戸小では、PTA会長であり町内会副会長でもある天谷氏が、小学校と町内会と米農家をつなぎ、本会の方針に合致したフィールドを整えました。
2003年4月現在、学習圃場となる水田を確保し、具体的な計画の調整段階に入っています。
 
◎小学1年生の料理教室は家庭で包丁を持たせるのが目的(食教育班)
 
○有志の栄養士をスタッフとして、子ども達が自ら実践できる基礎技術を身につけるため、地域でとれる旬の食材を利用して料理教室を開催する。
 
○「危ないから、包丁はもっと大きくなってから」が高じて、多くの大学生は料理ができません。
少しくらい怪我をするくらいじゃないと、上手に包丁を使いこなせるようにはなりません。
そこで、小学1年生に包丁を持たせる料理教室を開くことにしました。
 
対象は、親が包丁を持たせるのを躊躇っている小学校1年生の子ども達で、条件は、その後、お手伝いを通じて包丁仕事を根付かせる意志があることです。
いくら、良い講習会をしても繰り返し復習しなければ身に付きません。
私達の狙いは単発で「こんなものか? 面白かった。」という体験で終わらせるのではなく、家庭で始めるきっかけをつくることです。
旬の食物を家族で料理し、楽しい食卓や家庭を演出できる技術やアイディアを提供したいと考えています。
「学び隊」の食教育班が、2度に渡りこの狙いで子ども達と旬の料理に挑戦します。
2度目の教室では、家庭でどの程度お手伝いできたかを調査し、次年度の企画を考えます。
 
○これも含め、茨戸小で一連の学びができれば理想的です。
夏休み中に、旬の食材で第一回目を行い、秋に実った米を使って二回目を行うわけです。
それが難しければ、公募で小学校一年生を対象に、同様の包丁体験の料理教室を企画しようと考えています。
 
◎2003年度は、以上の2つのテーマを軸に活動を進める予定です。