小麦アレルギーに対応する野菜レトルトカレーの開発について
 
関係者各位
 
 昨今、食品の生産、加工、流通に関する不誠実な行為が次々に明るみに出ています。
その責任の多くを業者が担うのは当然ですが、一部の責任は消費者の無理解にもあると考えます。
 生産者が、安全で美味しい商品を開発するのは可能でしょう。
しかし、それに加えて低価格というのは難しいことです。
その生産工程を理解せずに不相応な安さを求めた所に、嘘やだましを助長する温床ができたように思うのです。
 大まかにでも生産や流通の流れを知り、適正な対価を理解する土台づくりが必要です。
 さて、アレルギーは個人差を特徴とする病態であり、ごく微量の混入物でも激しい症状にみまわれることがあります。
従って、アレルギーを意識して製品を作るなら、原材料の選定から製造工程、包装容器にいたるまで徹底した管理と誠実な情報提供が求められます。
そこに「秘密」などという言葉が入り込む余地はありません。
 また、アレルギー用に食事を作る人は、食材や調理法の知識を深めていますから、ある程度の情報を加えるだけで適正な価格を理解できる基礎があります。
 そこで、食物アレルギーを突破口にして、食品に対する理解と信頼を回復できないものかと考えました。
 その試みとして、アレルギー患者という消費者サイドからの提案を持ち込んでレトルトカレーの開発を求めることにしました。
 
 
開発企業への提案
 近年、小学校の宿泊学習などのイベントでは、カレーを作ることが多い。
これまで、食物アレルギーの児童には、自宅で作り冷凍したカレーを現地で解凍するよう指導してきたが、母親や現地スタッフの負担は想像を超えるものがあった。
理想的には、個人差の理解を深める教育的配慮から、制約のある児童に合わせて食材を選ぶか、一部を別に作ることが望ましいが、ルーを変えてカレーを一人前だけ別に作ることは現実的とは言えない。
 これまで、食に対する基本的な考え方から、私はレトルト食品に頼ることを戒めてきたが、このような事情に鑑み、アレルギーに配慮したレトルトカレーの製作を依頼するものである。
 レトルトであっても、アレルギー用であるからには厳密な製品管理と原材料の明示を徹底する必要がある。価格の問題もあるが、アレルギーの用途のみに大量に作成し、一人が同じものを多量に食べることになれば新たなアレルギーを引き起こしかねない。
 そこで、より多くのアレルギー患者が利用できるように食材を工夫すること。
さらに、アレルギー以外でも利用価値の高い商品にするよう提案したい。
上の条件を満たすなら、低カロリーで素性を明示した安全性の高い食材でまとめられ、アレルギー以外の方々にも十分利用を呼びかけられる商品になる筈である。
 以上について検討され、小麦抜きの安全で美味しい野菜レトルトカレーの開発を希望するものである。
 
 
 この提案に、応用栄養学食品研究所の山口氏が応じてくれました。
山口氏との話し合いの結果は次の通りです。 
 
・油は、最もアレルギーが少ないオリーブオイルにする。
・でんぷんが必須なので、取り敢えず、北海道で食材の安全性を確認できるジャガイモとカボチャに絞る(第一段として、ジャガイモから始める)。
・できるだけ広くアレルギーに対応するため、小麦、大豆と動物性食品を一切排除したカレーにする。
・調べられる限り、材料は良質ののものを選び素性はオープンにする。
・有機や無農薬野菜を中心に素性のしっかりした食材は、北海道で揃えることは可能だが、オリーブオイルやスパイスは外国産に頼らざるを得ない。
そこで、自然食の商品開発を手掛けているグループに協力を要請する。
・食材をハセップ方式で処理し、包装も今のところ環境ホルモンの疑いがなく可能な限りシンプルなデザインにまとめる。
・作成意図に理解を求め、工場オーナーに試験製造として取り扱うなどの協力を依頼する。
 
 以上の企画を基に、応用栄養学食品研究所に製作を、千野米穀店に販売を依頼しました。
 
       平成14年11月2日    長谷川クリニック 長谷川 浩