「アレルギーと化学物質および電磁波過敏症」
               2003/2/6 札幌市内の小学校における総合学習にて
 
(資料やスライドを利用して講演された院長先生の手持ち原稿を、文章だけでも内容が判るように、みどりやまが書き改めています。)
 
 
1、自己紹介
 
(家族のアレルギーと化学物質過敏症)
・私は、靴店さんやデパートの衣料品売場では眼がチカチカして気分が悪くなります。
他に敏感に反応する物は、整髪料、芳香剤、香水、煙草の煙、体育館のワックス、マジックインキ、排気ガス、パソコン室の臭いなどです。
原因はその中の化学物質だと思いますが、体がだるくなりイライラしてきます。
アレルギーでは、動物性の食品全般に反応しますが、特に魚でブツブツとたくさん発疹が出ます。
この症状は、体調を崩した時にひどくなります。
・長男は、最近ずいぶん軽くなりましたが、多くの食べ物にアレルギーがありました。
エビ、カニ、そば、卵、鶏肉、小麦、イースト、植物油(特に酸化した油)にあり、果物、甘いもの全般やダニカビにも反応して、湿疹や喘息 鼻炎 が出ました。
化学物質のほうは、排気ガスで咳込み身体がだるくなります。
・これらの症状は意識しなくても同じ条件で繰り返し起きますので、化学物質過敏症とアレルギーによるものと考えています。
 
(医者としての目標)
・私は22年前に小児科医になりました。
食べ物アレルギーは、息子と私にあったので18年前に始めました。
先輩の医者が「アレルギーは遺伝だから(薬に頼るしか)仕方ないよ。」と言われたのに反発して、少し面倒でも原因を見つけて対策を立てる治療法を考えてきました。
そんな中でたどり着いた答えは、せめて孫達の健康くらいまで考えて生活を見直したほうが良いということです。
このことは、アレルギーばかりでなく、最近増えてきた様々な病気を予防する手段にもなります。
・治りにくい病気に医者も患者も大変な思いをしながら日々悪戦苦闘していますが、成果は少しだけです。
そんな病気にならずに済んだら、どちらもどんなにか楽しく暮らせるでしょう。
最近は、化学物質過敏症や電磁波過敏症も目だってきました。
これらは、アレルギーもそうですが、治療と予防への近道を教える道案内のように思います。
・そんなことを考えて、医者としての目標を、生活の改善で病気にかかりにくくするアドバイザーになろうと決めました。
20年近く取組んできましたが、患者さんを診て、話をして学んだことが一番勉強になったように思います。
・現在はまだ、アレルギーや過敏症の全てが明らかになっている分けではありません。
今日は、私なりの考えで、食べ物アレルギーと過敏症の特徴と何故増えてきたかについて大まかに話してみます。
 
2、アレルギーって知ってますか?
 
・身体を守る働きに免疫というのがあります。
一度・はしか・にかかると、その後はかからなくなります。
ワクチンでも同じですが、外敵として覚え込む(免疫ができる)には1〜2週間必要です。
一度憶えて(免疫がついて)しまえば、同じ外敵が少しでも侵入した時には素早(すばや)く撃退できます。
このとき、はしかに免疫がついたと言って喜ぶわけです。
・一般に、この免疫が暴走して自分自身を傷つける場合をアレルギーと言います。
喘息やアトピーなど不快な症状が出てきます。
でも私は、アレルギーはそんな悪者じゃなくて、むしろ悪い状態に向かっていることを現す注意信号だと思っています。
・たとえば花粉症です。
花粉自体に害はありませんから過剰反応だと言いますが、ディーゼル排気ガス、農薬や電磁波が引き金になるという研究結果が出ています。
ディーゼル排気ガスや農薬を排除したり電磁波に警告を発しているとしたら立派な注意信号です。
・アレルギーは40〜50年前にはほとんどありませんでした。
そのあとアレルギーが急に増えてきた原因の一つは、化学物質や電磁波を便利さにまかせて使い過ぎていることにあるだろうと思っています。
 
3、あなたも甘いものが好きですか?
 
・疲れてくると甘いものを身体が要求する!と言いますが、甘いもの中毒?にご用心!
昔は楽しみの素(もと)だったのに、今は禁断症状という苦しみの元凶(もと)になっています。
甘い物(砂糖・果糖)やアルコールを過剰に摂って、米アレルギーまで悪化してきました。
何事も『中庸』(ほどほどで済ますこと)が大切です。
・お祭り料理と嗜好品は、エスカレートしがちです。(更に刺激的なものを求めたくなります。)
刺激的なものはたまの楽しみにして、時々だから余計に感動できるという発想を持ちましょう!
嗜好品は、あれば欲しくなりますので、一番の対策は、日常は家の中に置かない持ち込まないことです。
 
4、食べ物アレルギーには個人差が大きい
 
・ほんの少しにでも反応してしまうのがアレルギーの特徴です。
アレルゲン(アレルギーの原因)と誘因は個人差が大きく、その種類と反応の強さは人それぞれ違います。
誰(何)にでも良い面と弱(悪)い面はあります。
よく理解し合い、弱い面を補い良い面を引き出したいものです。 
・アレルゲンの強さを増す因子は、酸化した油、化学物質、糖の過剰 (安さ便利さが増し嗜好品が溢れる原動力)などで、心身の状態や(アレルゲン以外にも)様々な要因が積み重なり影響して症状が出始め、こじれて行きます。
・アレルギーは早くから軽いうちから出てきてます。
もっと重い病気(成人病やガンなど)に気を付けてというメッセージではないかと思っています。
 
5、食べ物アレルギーと社会の変化(何故、急に増え悪化してきたのでしょう?)
 
・食生活の変化
1)飽食とグルメ志向・・・嗜好品中毒(依存症)
2)化学物質の多用と依存
3)食性からの離脱
 
・食べ物アレルギーは、嗜好品の過剰と化学物質に依存した社会への注意信号?!
(病気の治療と予防を 食のあり方から考えてみましょう。)
 
・最近40〜50年で急増した食べ物とアレルゲンの広がり
・40年前;卵 牛乳など動物性蛋白や大豆油の単独か少数
−−−> 現在;甘い物、穀物、カビまでを含み、多種で広範囲に拡大
 
・本来の食性から離れた猫に、現代人の慢性病と同じ症状が。
 (皮膚炎 虫歯 糖尿病 リウマチ 狂暴性など)
・ヒトの食性とは?−−−>(自然淘汰と身土不二)
(日本人の食性は・・・穀類と野菜が中心、緑黄色野菜 豆類 胡麻 芋類 海藻 一物全体食(魚 穀類))
 
6、化学物質過敏症(発症は高濃度で起こるが、その後は 極く微量でも反応する)
 
・発症率 : 米国とカナダでは10%程度
・化学物質過敏症は、身体が弱っている時に多量の化学物質に曝されれば、誰にでも起こる可能性があります。
化学物質と心身の様々な要因(ストレス、食事や生活リズムの乱れなど)が積み重なって、適応能力を越えると発症します。
・適応能力(解毒能力)がバケツの大きさと考えると、それはそこそこ大きな容積ですが、一旦この量を越える化学物質により溢れてしまうと、極めて微量にまで反応し始めます。
発症後、(我慢したり気付かずに)放置すると、多くの化学物質へと反応が広がる (より低濃度にも) ことがあり、多種類化学物質過敏症(この状態では、社会生活が極めて困難になりますが、最近は増加の一途です。)となります。
・化学物質は、口から ・ 空気からとが互いに影響し合って過敏症を起こします(多くは何度か強く刺激されて重症化します)。
第一の治療は できるだけ早い段階で原因に気づき避けること、次いで、ビタミンミネラルの補充と運動や発汗させること。
根本的な対策は 大気、水、土の浄化ですが、まず、室内の空気や食べ物 生活用品の化学物質を最小限にまで減らしましょう。
 
事例紹介)
H君、5歳に、食べ物や空気中の化学物質で神経症状(物が二重に見える、身体が勝手に動いてしまうなど多様)が出現。
元々、多種の食物アレルギー、金属アレルギー、ダニアレルギーがあります。
食物の化学物質では、市販のメロンを食べた後、怒りっぽくなり眼球上転とリズミカルな奇声を発した(意識あり)。
空気中の化学物質では、小学校での床ワックスがけを終えた翌日や、吹き抜けで繋がった他の教室でスライム作りをした時でも神経症状が出現した。(床ワックスでは、学校を休んでも症状が治まるまで3週間かかりました。)
 
7、原因として食べ物の化学物質が疑われる症例
 
・台所に虫がいると気持ち悪いですが、それを殺す農薬が多いと危険です。
農薬は、食物からより空気から吸い込むほうが多く、赤ちゃんなら誰にも悪影響します。
中国野菜から基準以上の農薬が見つかりましたが、中国の子供達は大丈夫でしょうか?
窒素肥料を多くしたりハウス促成栽培の野菜には亜硝酸が多くなり、39人の赤ちゃんが死亡しました。(米国 ブルーベビー事件 1956年)
・おいしくて安全な食べ物を国民が求めれば生産者は作ると言います。
でも、それを安く売りなさいと言うのは無理があります。
・食品添加物は、味や外見をととのえて腐らず安い食品を提供しますが、アレルギーや化学物質過敏症の原因にもなります。
 
8、電磁波過敏症(見えないし臭いもしないので気付きにくい)
 
・スウェーデンの携帯電話会社では技術者の90%が電磁波過敏症になったそうです。
悪条件では多くの人が発症しそうです。
・自律神経失調症状が主で年齢や性格・精神的な疾患と誤られます。
放置して病状が進むと日常生活がどんどん困難になります。
 
(過敏症以外の電磁波の害)
・日本では、(電化製品から出る)極低周波の平均被爆が4mG以上で小児白血病の危険率が2倍でした。(朝日新聞2002/8/24)
・英ブレア首相が「15歳以下の子供に携帯電話を持たせるな」と言った根拠は、若いほうが脳の深部まで熱作用が及ぶからです。
・携帯電話等から出る高周波の害で特に多いのは頭痛です。熱作用による白内障や脳腫瘍の他にも様々な障害が現れます。
・携帯電話は既に生活に密着した手段ですが、せめて有害電磁波の排出量を最小限にした製品や使い方を選んで欲しいものです。
・携帯中継塔近くで一定の曜日と時間帯に悪化する患者がいたり、携帯電話に対する依存症とも言うべき人(携帯が傍に無いと不安で仕方が無い)が急増していると思います。
 
9、では、一体どうしたら良いのでしょう?(私の頭に浮かんだこと:食べ物と精神面)
 
・第一は、嗜好品を日常的に家の中に置かないこと持ち込まないことです。(嗜好品中毒(依存症)予防のために)
・みんなで楽しく手作りを! お手伝いで料理作りにどんどん参加しましょう!!
・食べるのは、お腹が空いてから (体を動かし、体調や生活リズムを整えて)
・ゆっくり良く噛みましょう。(噛んで、アレルギーもボケもガンも吹き飛ばしましょう!!)
・食卓には、化学物質を減らして食性に合う伝統食を!(化学物質過敏症は、食卓から始まることもあります。)
・遠くから運べば、環境へ負担は増えるし栄養価は落ち感染の危険性が増します。
近くで獲れた旬(しゅん)の食べ物が一番です!
・ほどほどで満足することも大切です。(もう少しもうちょっとと欲張って、大切なものを失くしていませんか?)
・精神面は、心の持ち方と周囲の配慮がポイントです。
最優先にして欲しいのは、お互いの良い所と弱い所を認めて欠点を補い合う意識づくりです。
くよくよ悩まずいつも前向きに考えれば、楽しく生きられます。
誰もがプラス思考を維持できる社会にしましょう。
・期待や要求のハードルを下げて、褒(ほ)めたり感謝する範囲を広げましょう。(親や自分自身に対しても)
多すぎる情報から嘘やだましと誤解を取り除いて、互いの信頼関係を回復しましょう。
 
10、おわりに
・食事に関して一番問題なのは、日常的にお祭り料理や嗜好品を食べ続けていること、しかも、料理を人任せにしていることでしょう。
そのことを、アレルギーや化学物質過敏症の患者さんが教えているのだと思います。
・今、必要なのは、私達一人ひとりが、快楽に溺(おぼ)れず点検しながら自分の足元を固め直すことや、互いを尊重し補い合える心の豊かさだと思います。 
・そして、現状が如何に悲惨でも冷静に受け止め、少しずつ着実に改善しようとする粘り強い意思だと思います。
・行動の第一歩として、自然に則した大まかでも全体的なイメージをもち、怪しいものはひとまず避けるという前提で話しいましょう。
その際、無くて済むものと本当に必要なものを分けて考えるべきです。
・一部の人にとって無ければ困るという物もあります。
なぜ必要なのか説明したり理解しようとすることも必要で、自分の秘密も他人に影響するようになれば説明しなければなりませんし、その中で本当に必要な物だけ、安全性を追及しながら限定的に使って注意深く経過をみるのが良いと思います。
・種々な考え方が出てくるほうが、とんでもない危険思想に流されないためにも望ましいのです。
しかし、人間は集団生活をする動物ですので、自由を認める分、皆んなが納得できて抜け駆けをする気にならないルールが必要です。
この決め事は、ただルールに反せず迷惑を掛けなければ良しとするのではなく、社会に役立とうとする心や誠意を大切に育てるものであって欲しいと思います。
・さて、私達大人は子供の頃から一生懸命に勉強し働いてきました。
これは自信を持って言えます。
それなのに、最近なぜ不祥事が続いているのでしょう?
・少し単純過ぎるかも知れませんが、私が考えた理由を話してみます。
努力してどんどん技術が進み専門化が進んで理屈が難しくなりました。
説明するほうも聞くほうも面倒になったのです。
それで、利用する方は、悪い面を考えずに少しでも快適で便利で安いほうを選ぶようになりました。
売る方は、買って欲しくて良く見せるために、時々悪い所を秘密にしたり少しだけ嘘(うそ)もつきました。
・一度ついた嘘は知らない間に雪だるまのように大きくなって、仕方なく秘密にします。
それが何かの拍子にばれると大変な嘘つきと言われます。
最近、大きな会社の嘘が分かってつぶれたり、隠していた事故がばれて信用を失った企業があります。
・私は、事件を起こした同世代の日本人として恥ずかしく物悲しく感じます。
確かに嘘や事故隠しは許されないことです。
しかし、安全性とか仕事に見合った値段を考えず、ただ安さを求めてきた私達にも責任があるように思うのです。
・大変でも、嘘を止め秘密や誤解をできるだけ減らして互いに理解する勇気を持ちましょう。
怒っていたことも、良く知れば許せることって案外多いのです。
皆で知恵を出し合うと、誰かに良い解決策が思い浮かぶかも知れません。
・全てを理解するのは無理ですが、大まかな流れが分かっていると何かおかしい時には気が付きます。
できるだけ自然に近いもので練習しておくと色々な場面で応用が利きます。
・皆さんが田植え体験や野菜を作られたと聞きましたが、それは貴重な体験だったと思います。
それに加えて考えて欲しいことがあります。
今、色々な環境問題が話題になっていますが、一人だけが懸命(けんめい)に努力して駄目なことでも皆で少しずつ気をつければ上手く行くことが案外多いのです。
確かに我慢するのは長続きしないかも知れませんし、身体に悪そうです。
・では、我慢しないで済むように、普段は無いようにしておいて、何か特別の時にだけ使う(食べる)というのはどうでしょうか?
実は、私の経験からすると、それが一番楽しい使い方(食べ方)なのです。
・もう一つだけお話しておきます。
私達が今いる所に昔住んでいた人々や私達の祖先達が食べていた食べ物と生活習慣を基本にするのが健康には一番無難なのです。
そこから出発して、自分に合ったものを少しずつ取り入れて行くのが健康の早道です。
・また、何が重要かを知りたければ、失敗した経験がたくさんある人にお話を聞くことと自分でも体験してみることです。
世の中の全てを経験することは誰にもできません。
近くのお年寄り達を大切にして、たくさんのことを教えていただいてください。
家や近所でのお手伝いは良い体験になります。
自然から学ぶには、身体を使ってたくさん遊ぶことも大切です。
・先ほど触れましたが、皆さんが畑で育てた野菜には、多くの人達が関(かか)わり様々な自然現象や生物が影響していたことと思います。
自然の中で見つけた全体の流れをつかむ感触は、自分の行動が社会にどう影響するかを大まかとらえる良い判断材料になります。
・これからも自然(外遊び)や実社会(家のお手伝いなど)からたくさん学び、良い判断力を研(と)ぎすまして下さい。
それと共に、誤りを正す勇気と人を許す優しさを持っていただけたら嬉しいです。
私も欲張りな大人の一人になってしまいましたね。
ごめんなさい。
 
  ◆体のリズム 自然のリズム 地球のリズムに合わせた食と農、
     そして、ライフスタイルのあり方を一緒に考えて頂ければ幸いです◆